「紺のダブルの上着と縦じまのズボン」
From杉本
「今日は、なに着て行こかな」
「紺のダブルのスーツにしようか、
それとも縦じまのスーツにするか」
と考えていましたら、
その日、大勢の聴衆の前で話す内容について、
ふと、新しいアイデアが湧いてきました。
そのことを考えながら、スーツを着て出かけ、
会場の壇上に座って、
話をする順番を待っていました。
私の前の話者が、
そろそろ終わろうかとするとき、
ふと私の着ているスーツに目が留まりました。
何と、紺のダブルのスーツの上着を着て、
縦じまのスーツのズボンを
はいているではありませんか?
「えらいこっちゃがな」
「ちぐはぐな衣装を見て、みなさん、どない思いはるやろ」
「お腹が痛いふりをして、ここは一丁逃げ出そか」
などと、短い時間で、いろいろ考えました。
人間の脳は、最悪の事態に備えるために、
回路の配線が決まっています。
危険や困難なことを察知すると、
人間の心はすぐに不安に襲われ、
逃げ出したいと思います。
そのときに感じる
「戦うか、逃げるか」という気持ちは
脳の警戒警報とも言えます。
この脳のクセを、脳科学者は
「否定的偏向」と呼びます。
私が陥った状況が、まさにこれでした。
とうとう逃げ出す暇もなく、
私の順番がやってきました。
私は立ち上がるといきなり、
自分のチグハグな服装の経緯を
白状しました。
すると皆さんは、えらく笑って下さって、
それに続く話を、集中して聴いてもらえました。
終わってから、
たくさんの方々が近づいて来て、
私の着ているものをチェックしながら、
お褒めの言葉を頂戴しました。
私の頭の中で鳴っていた警戒警報は、
とうに消えていて、
落ち着きを取り戻し、
達成感を味わっていました。
この脳の状態を、
ポジティブ・オフセット
(前向きなことでの帳消し)と言います。
この感覚を経験すると、
人はそういった「ご褒美」や「興奮」を、
もっと求めるようになります。
つまり、この
「前向きなことでの帳消し」があることで、
人は何かを学んだり、
成長すると言っても過言ではありません。
このご褒美や興奮の経験が、
次に何かをやろうとするときに、
失敗を恐れてやめておこうかと考えても、
その心のブレーキを外して、
その後に得られる、ご褒美や興奮のために、
「やってみる」ことを選択するのです。
「否定的偏向」は、
成長するためにあることを自覚すると、
成長の機会が格段に多く訪れることでしょう。
あなたの目の前に、
いっぱい、いっぱい
チャンスが広がっているのに
気づかれますように。
育自コンサルタント
−自分を育てるお手伝い−
杉本恵洋(すぎもと しげひろ)
PS. 失敗を恐れず、挑戦する勇気を養うには、
モルツ博士の言葉が一番です。
http://www.0stresslife.com/zrl/
名前も見ずに何気なく読み進めて、「ちぐはぐな衣装を着てきてしまった。」という箇所で、
思わずニッコリ笑ってしまいました。そして最後まで読んで名前を見ましたら、そしたら、やっぱり杉本さんでした。やっぱりというのは、「ちぐはぐな衣装を着てきてしまった。」という部分のことではなく、「人前で最初にまずその経緯を話しました。」という部分です。すごく面白いです。だから好感を抱いてしまうんですね。人間は、ほんのちょっとしたところに その人の人柄があらわれるものだと思います。そして、人間、そんな何気ない愛嬌ある正直な振る舞いにこそ、その人への確固たる信頼感や安心感を覚えるのではないでしょうか?